TOP > 会社員のための内部統制入門 > 注目経営者訪問インタビュー:株式会社 ドン・キホーテ 代表取締役会長 安田隆夫氏
注目経営者訪問インタビュー 筆者の尊敬する経営者ご紹介
弊社取締役青野が、組織力に悩む中小企業に向けてメッセージを頂くため、注目経営者をご訪問、インタビューさせていただいたときの内容をご紹介しております。
インタビュー実施日:2006/01/25
株式会社 ドン・キホーテ
代表取締役会長 安田隆夫氏
安田隆夫(やすだたかお)氏 プロフィール
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1949年岐阜県生まれ。慶応義塾大学法学部卒業後、78年東京・杉並にて日用雑貨等の安売り店『泥棒市場』を個人開業。80年株式会社ジャスト(現 株式会社ドン・キホーテ)、82年株式会社リーダーを設立し、それぞれ代表取締役に就任。一時卸売業に比重を移すが、88年東京・府中に『ドン・キホーテ』第1号店を開店し、小売業を再開。 関係会社:株式会社パウ・クリエーション、株式会社ディワン、株式会社ドンキコム、株式会社ドンキ情報館 |
青野;このたびはお忙しい中、お時間を頂き、大変ありがとうございます。私たちは、会計を社内でオープンにしている企業は組織力が高く、成長力があるという仮説をたてています。中小企業の多くが、会計を社内に非公開にしています。組織力に悩む中小企業の経営者へのメッセージをいただきたく、本日インタビューに参りました。
青野;数値を透明化することについて、社内の和が崩れるなどの反対はありませんでしたか?
安田会長;人情とか和などは収益の前に論ずべきことではありません。企業において収益こそが和の根源でもあるのです。
わが社では、なるべく小さな組織にくくり直してその中でたくさんのスターをつくるようにしています。
権限委譲とチェッキングの両方が必要なのは当たり前のことです。けれど、透明になった会計に対しては、ポジティブなことだけしか言ってはいけないと思っています。透明会計導入の成否は結果をネガティブにとらえないことでしょうね。
私どもは、「狭くて深い権限委譲」を実行しています。『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』(光文社刊)は私も面白く読みましたが、敗因は、権限を完全に委譲せず、成果だけを求めているためだと思いました。すなわち、外部コンサルタント主導の中途半端な権限委譲が失敗のもとだろうと。
青野;以前、ご自身の商売での「ひらめき」の原体験を店長にも体験させるためにと、仕入れから販売まで何から何までを店長に任せてみた、とおっしゃっていましたが、とても勇気の要ることだったと思います。安田会長のように、「夜中にお客様がいらした」からとか、「店が商品であふれかえった」からというようなことで、誰もが商売の「ひらめき」を得られるものではないと思うからです。
安田会長;プロセスコントロールをしても保証はないですよね。つまり、管理型の徹底で全てのリスクヘッジができるわけではない。だったら、どのみち保証がないのだから、信じた方が良いと思います。
プロセスコントロールはかえって危険です。チェーンストアならマニュアルが必要ですが、私どもみたいにプロセスが複雑だと無理ですね。こっちの体がもたない。
青野;プロセスコントロールという言葉はどこで習得された言葉ですか?コンサルタントから?
安田会長;自分で考えました。私どもはこの仕組をつくるのに、外部コンサルタントを入れていないんです。真に組織力を高めるための権限委譲は、現場や事業をよく知らないとできないので外部が入る余地はないと思っています。
安田会長;店舗別売上高、利益率、商品換金率、伸び率など大会社ならやっている当たり前の計算をしているだけです。今は、POSで何でもあっという間に詳細に分析できます。日経平均のようにビジュアルに。セクションと担当を細かくわけることがポイントです。人事考課についてもコンサルタントは入っていません。フィードバックの仕組は、月次では、単に、数字をもとに「よくやった。すばらしい。」など話をするだけです。私どもでは、毎月の数字はボーナスには直結しないからそれほど真剣勝負ではないんです。それに引きかえ、半期決算は真剣勝負。とても大変ですが、全員と、役員が個別に面接をしています。入ったばかりのような人は店長が行いますが。
経営会議はランキング順に席が決まっています。一番成績のよかった人が私の隣に座るんです。経営会議には100人くらいは出席するんですよ。出席者はエリアマネージャー以上がほとんどで、店長も一部出席します。
経営とは人間を経営することです。日本人1億2千万人は全てドラマの主人公。だから、私どもの社員も全員主役にしようと考えました。そのために、たくさん舞台を用意しましょうと。
私どもは、仕入が多岐にわたり、オペレーションが煩雑。だから、指示系統でシステムを構築するのはそもそも無理なんです。
権限委譲したら働き者ばかりになったんです。ほっといても働きますよ。
青野;親ばかかもしれませんが、私は子供をほったらかしにしたら、期せずして手のかからない子に育ちました。子育てと同じかもしれませんね。
安田会長;青野さんのお子さんが良い子に育ったのは、あなたが一生懸命働いているからですよ。私どもも、権限委譲はするけど、丸投げではない。上は下以上に働く。働き者だけが上に上がるということもありますしね。
青野さんは、中央青山監査法人のご出身ということですが、中央青山監査法人の会計士が逮捕されましたよね。逮捕された会計士は運が悪かったと思うけど、「時代が変わる」ってこういうことなんだと思います。時代は1ページめくられました。まさに透明会計をしていかないと!
そして、権限を委譲していく代わりに、モラルは向上させないといけません。
質実剛健な社風に明確な倫理基準、そしてチェッキングは当たり前です。チェッキングなくして権限委譲はありえません。
青野;貴社のチェッキングは専門的にはパフォーマンスレビューといいます。
安田会長;その言葉いいですね。そう、パフォーマンスレビューですよね。
ゲーマーは暴走しますからね。住商事件でもゲーマーが暴走しましたよね。
わが社では、社風と倫理基準が先にあったというより、権限委譲をしていくときに、社内や自分をきれいにしないとやっていけなかったというのが実態です。100名くらいの体制だった時から、私公混同はいっぱいしましたが、公私混同はしませんでした。私公混同のもたらした波及効果は、その費用対効果を考えるとすばらしいです。逆に考えれば、公私混同したときの悪影響のリターン率は想像しただけで恐ろしいですね。
中小企業の社長さんにはそのことを言いたいんです。そして、権限委譲をすることの重要性。自分の能力を封印しない限り会社の成長はないということに気付いていただきたい。ほとんどの社長さんは、社長の力を源泉にひたすらがんばってしまっています。それって永遠にできますか?
だから、中小企業の社長は能力が高い人が多いのに大企業に脱皮できないんです。自分の能力を封印して部下に権限を委譲することはどんな企業にも必要です。社長の能力を封印しないと、与えたつもりの権限も権限ではなくて、義務になってしまうからです。自分の力にストッパーのふたをつけて部下に花を持たせればいいんです。
もちろん、有事の時はTOPダウンも必要ですがね。
青野;今日はお忙しい中、本当にありがとうございました。自分の能力を封印すること、そして責任や義務だけでない真の権限委譲をすること。これが会社を成長させるキーポイントですね。そして、権限委譲の成り立つ組織には、倫理基準と透明会計によるパフォーマンスレビューが不可欠ということですね。大変勉強になりました。本日は本当にありがとうございました。

